かゆいだけではない!! 犬をねらうノミやマダニは恐ろしい感染症の運び屋

犬の体にノミやマダニなどが寄生する事はよく知られていますが、彼らの本当の恐さをご存じですか? ノミやマダニは、刺されて不快というだけでなく、愛犬の健康をおびやかす病気(感染症)の運び屋でもあるのです。たとえば、マダニが運び屋となる「バベシア症」は、一度感染すると完治が難しく、時に死に至ることもあるやっかいな病気です。愛犬の健康を守るために、「バベシア症」を中心としたノミやマダニが媒介する犬の感染症と、寄生虫の駆除のあり方について、正しい知識を身につけましょう。

2012年7月11日RSSRSS

【監修】
佐伯英治先生(サエキベテリナリィサイエンス)

【記事協賛】
バイエル薬品株式会社(http://www.bayer-pet.jp/pet/

【犬をねらう寄生虫と感染症】
フィラリアだけではない!ノミやマダニは恐ろしい感染症の運び屋

寄生虫は、回虫や瓜実条虫、フィラリア(犬糸状虫)のように体の中にすみつく「内部寄生虫」と、体の外側につく「外部寄生虫」の2つに大きく分けられます。そして、犬の外部寄生虫の代表格がノミとマダニです。ノミもマダニも犬の体について血を吸いますが、犬だけでなく人を刺すこともあります。ノミに刺されると激しいかゆみを伴い、アレルギー性皮膚炎を起こすこともあります。一方、マダニは、基本的にかゆみを引き起こすことはありませんが、吸血量が多く、自分の体の何倍も血を吸うため、たくさんのマダニが寄生すると、犬は貧血を起こすこともあります。
愛犬の体に「虫」がいるのは、人にとっては不快という情緒的な違和感を感じるだけかもしれませんが、犬ではそれ以上に大きな実害をともなう問題なのです。ノミやマダニの姿を見つけると、不快感から慌てて駆除をする人は多いのではないでしょうか?適切に駆除をすれば、愛犬の身の回りからノミやマダニはひとまずは姿を消すため、それですべてが終息したと思い込む方もいるでしょう。
けれども、ノミやマダニがもたらす弊害はかゆみや皮膚炎だけではありません。良く知られているように、フィラリア(犬糸状虫)は蚊の吸血時に虫体が伝播され感染が拡大しますが、同様にノミやマダニもさまざまな病原体の運び屋になっています。代表的なものとして、ノミが媒介する瓜実条虫症や、マダニが媒介するバベシア症、ライム病などがあります。ノミやマダニには「刺されるとかゆい虫」ではすまされない様々なリスクが潜んでいるのです。

【犬のバベシア症】
赤血球が破壊され、死に至るおそれもある危険な病気

ノミやマダニが媒介する感染症のうち特に犬で注意したいのは、マダニを介して感染するバベシア症です。

どんな病気

原因となる病原体はバベシアという小さな原虫です。これが犬の赤血球中に入り込んで発育し、やがて赤血球を次々と破壊するため、重度の溶血性貧血が起こり、症状が進行すると死に至ります。7歳以下の犬に多く見られ、5~6月と9~10月に発生しやすいと言われています。

感染ルート

マダニは数mm~30mmの大型のダニで、鋏角(きょうかく)というハサミのような部分で皮膚を切開し、口下片(こうかへん)という突起物を突き立てて、体を安定させてから吸血します。吸血を始めてから48時間以内に、バベシアはマダニが吸血時に分泌する唾液とともに犬の体内に侵入し、赤血球に寄生します。バベシアは血球の成分を栄養源として発育し、分裂を繰り返して増殖します。バベシアに感染している犬と他の犬がケンカをしたときに、傷口から感染する可能性も考えられます。

発生地域

近畿以西の一部の地域では常在化していますが、最近では関東や東北でも感染例が報告されています。発生地域は全国に広がりつつあり、媒介マダニが生息していれば日本全国どの地域でも今後の感染リスクは否定できないものと考えられます

症状

貧血の他に、発熱、元気消失、血尿(血色素尿)などがみられます。感染後、数週間してから症状が現れる症例が多いと言われています。バベシアが体内に潜んでいても症状が現れない(不顕性感染)犬もいますが、一般に幼犬や初めて感染した犬では症状が強く現れます。治療が遅れると最悪の場合死に至ります。

治療

現在の日本では、バベシアを完全に除去できる薬はないため、(マラリアなどの)抗原虫剤や抗菌剤でバベシアの増殖を抑えて、症状を和らげます。回復しても完治しないでバベシアが体内に潜んでいる(持続感染)ため、再発をおこしやすい病気です。

予防

「バベシアの運び屋となるマダニを寄生させない」、これが一番の予防策です。動物病院で処方されるマダニ駆除薬によってマダニの咬着を防ぎ、日々の心がけとして草むらや河川敷などマダニが多数存在するところにはなるべく犬を近づけないようにしましょう。

【感染症と寄生虫予防】
“治療”としての駆除よりも、寄生させない“予防”策が重要

一般的に日本人は “虫刺され”に対しては鷹揚であり、刺されたら虫刺されの薬やかゆみ止めをつけておけば大丈夫という感覚があり、外部寄生虫に対する危機意識も薄いと言われています。愛犬の体にノミやマダニを見つけたときにはしっかり駆除薬を使用するものの、姿が見えなくなってからは安心してやめてしまう人も多いようです。たしかに駆除薬によって比較的簡単に駆除できるので、“ノミやマダニがまたついたら、薬で駆除すればいい”と考えている人がほとんどではないでしょうか。
けれども、外部寄生虫の本当の恐さは、刺されてかゆくなるだけではとどまらず、様々な感染症を媒介する『病原体の運び屋』という別の一面もあるのです。ノミやマダニの寄生は同時に、これらが媒介する感染症にかかるリスクがかなり高くなる可能性を意味します。それらの中にはバベシア症のように、罹ってしまえば完治が難しい病気もあります。
フィラリア症から愛犬を守るために、予防薬を毎年一定期間投薬することは、今や多くの飼い主さんに広く浸透しています。けれども、ノミやマダニの駆虫については、“寄生したら退治する”という治療的な対応がまだ主流です。感染症予防という観点から考えれば、ノミやマダニも定期的に駆虫して、病原体の侵入をできるだけ防ぐことが重要です。また、「うちのコは室内飼育だから大丈夫」という安全神話も通用しません。地域猫の調査では、ノミの寄生が少なくとも50%の猫にみられます(佐伯ら)。ちなみに犬と猫に寄生するノミはネコノミがほとんどで、人やその他多くの動物に寄生します。屋外の環境中にはあちこちにノミの卵、幼虫やサナギが潜んでいるので、散歩で外に出る機会があれば、いつノミがついてもおかしくありません。たとえ、完全室内飼育で愛犬が一歩も外に出なかったとしても、飼い主さんの衣服や靴底に付いてきたノミが感染源となる場合もありうるので、絶対という保証はないのです。
愛犬をかゆみなどの不快感から解放し、おそろしい感染症から守るためにも、定期的に駆虫を行いましょう。駆虫薬の種類、駆虫の期間や間隔は、犬の年齢や地域によって異なるため、動物病院にご相談ください。

【Doctors Message】
愛犬の命を守るためにも定期的な予防対策を行いましょう

「バベシア症は、かつては西日本限定の病気のように考えられてきましたが、関東や東北でも感染例が報告されていますし、バベシアを媒介するマダニそのものは日本全国に生息しているわけですから、いつどこで発症しても不思議はないと言えます。バベシア症のように、現時点では特効薬がなく完治が難しいうえに死に至る可能性もある病気では、唯一かつ最善の予防策はマダニを寄生させないことです。単なる“虫の駆除”ではなく、寄生虫が媒介する感染症から愛犬の命を守るためにも、定期的な予防をおすすめします」(佐伯英治先生)

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