愛猫の免疫力に黄信号!7歳はケアを始める節目の年齢。

猫も7歳になると、体のあちこちに少しずつ老化の兆しが現れ始めます。いわばシニア期の入り口。体を守る免疫力も衰えてきて、感染症やがんなどの病気にもかかりやすくなります。そこで、老化に伴う免疫力の低下、どうすれば免疫力を維持できるのかについて、井本動物病院院長・井本史夫先生にお伺いしました。

2015年2月24日RSSRSS

【監修獣医師】
井本 史夫 先生
(井本動物病院 院長)

獣医師。集合住宅における人とペットのよりよい暮らし方、コミュニティづくりに取り組み、各地で講演活動なども行っている。「ヒトと動物の関係学会」元事務局長、家庭動物総合研究所所長。著書に『間違いだらけの室内犬選び・育て方-犬種別付き合い方マニュアル』(講談社)、『集合住宅でペットと暮らしたい』(集英社)、「知っておきたい猫の病気」(『ねこの手帖』2000~2003年連載)、『犬の飼い方小百科』(共著:日本文芸社)など多数。他にNHKテレビ「シニア犬のケアと介護」(2013年7/1~7/11)出演など。

免疫力を担っているのは、実は「白血球」

免疫とは、私たちの体を病気から守っている自己防衛機能で、その働きは人と同様、猫にも備わっています。細菌やウイルスなどの体内への侵入を防いだり、体内にできた有害な細胞を除去したりして、病気になるのを未然に防いでくれています。

免疫力を担っているのは、「免疫細胞」と呼ばれるもので、これは血液中の白血球のことです。血液を通じて全身をパトロールし、つねに敵の存在をチェックしています。また、免疫細胞は一種類ではなく、様々な免疫細胞が、「外敵を発見」したり、その「情報を伝達」したり、「外敵を攻撃」したりと、互いに複雑な役割分担をしながら、連携して敵に立ち向かっています。

免疫細胞の6~7割は、「腸」に存在しています。なぜなら、腸には、体に必要な養分を吸収するだけでなく、口から入ってきた細菌やウイルスなど、体に有害なものを便として排出する働きもあるからです。腸は、外敵の侵入を迎え撃つ最前線ともいます。だからこそ、免疫細胞は腸に集中し、病原体が体内に取り込まれないように守っているのです。

加齢とともに免疫力が衰え、病気の発症を抑えきれなくなる

この頼りになる免疫力も、年齢とともに衰えてきます。猫にとって、7歳頃はシニア期の始まり。体に変化が現れ始める節目の時期であり、この頃から、少しずつ体の不具合が出やすくなってきます。老化による免疫力の低下が、その大きな原因の一つと考えられます。

免疫力の低下が発症に関与している病気はたくさんあります。例えば、猫に多い様々な「ウイルス感染症」、感染性の「皮膚炎」、新たな「アレルギー症状」の発症など。また、猫によくみられる難治性の口内炎も免疫が関わっているといわれ、高齢期に増加する「がん」も同様です。

猫の腫瘍疾患の発症率を年齢別にみると、7歳で2.7%、10歳で5.3%と、加齢とともに顕著に増加していくことがわかります(アニコム調べ)。
がん細胞は、実は日常的に発生しています。免疫力が活発に働いているときは、免疫細胞が見つけるなり取り除いて、発症に至らずにすんでいます。ところが、老化に伴い免疫力が落ちてくると、防ぎきれずに発症してしまうわけです。

サプリメントなども、免疫力のキープに有効

高齢猫の飼い主さんは、若い頃以上に愛猫の健康状態に注意し、きめ細かなケアで免疫力の低下を補ってあげることが大切です。
免疫力を維持するには、例えば次のような方法が考えられます。

  • 食事は、ライフステージに合った「栄養バランスの良い」ものを。
  • 免疫力の活性化には、「適度な運動」も大切。
  • ストレスは免疫力を低下させるので、「過剰なストレスがかからない生活」を。
  • 免疫力をつかさどる「腸の健康」に配慮して、乳酸菌などで腸内環境を良好に。
  • より積極的なケアとして、免疫力を支える効果のある「サプリメント」などの活用も。

最近、注目の栄養素「β-グルカン」の働きとは?

最近、注目されている栄養素に、「β-グルカン」があります。食物繊維の一種で、酵母やキノコ、海草、大麦やオーツ麦などの穀類にも含まれている成分です。健康面で様々なメリットがあるとされ、血中コレステロールの正常化、腸内環境の調整、満腹感の促進(減量)などのほか、「免疫力を高める」働きにも大きな期待が寄せられています。

免疫細胞にはいろんな種類があるといいましたが、例えば、病原体や異物が侵入すると真っ先に飛びついて、むさぼり食べるのがマクロファージで、“大食細胞”とも呼ばれています。また、体内をパトロールして、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を発見すると、直ちに攻撃する“殺し屋”が、NK(ナチュラルキラー)細胞です。

β-グルカンには、こうした免疫細胞の数を増やしたり、その働きを強めたりして、免疫力を向上する作用が認められています。中でも、黒酵母由来の発酵β-グルカンはキノコ由来のβ-グルカンと同じ構造をもっており、免疫力を高める作用が強いことが知られています。大麦β-グルカンは、発酵β-グルカンと一緒に摂ると、より効果的といわれています。β-グルカン配合のサプリメントなどを通じて、愛猫の病気になりにくい体づくりをめざしたいですね。

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