愛犬の元気がない、急に老け込んだ・・・「甲状腺機能低下症」が原因かも?!

「なんとなく元気がない」、「寝てばかりいる」、「散歩を嫌がる」、「毛並みや毛づやが悪い」、あなたの愛犬にこんな症状はありませんか? もしかすると、その症状は「甲状腺機能低下症」という病気が原因かもしれません。「甲状腺機能低下症」の症状は老化現象に似ているので、飼い主さんが「年のせい」と思い込み、病気の発見が遅れるケースが多いといわれています。病気の発症に気づかすに放置していると、本来持っているイキイキとした姿を損ない、ときに寿命をまっとうできずに死んでしまうこともある恐ろしい病気です。愛犬といつまでも元気で過ごせるように、「甲状腺機能低下症」に関する正しい知識を学びましょう。

2012年3月6日RSSRSS

【監修・写真提供】
竹内 和義 先生 (たけうち動物病院/神奈川県) http://www.takeuchi-vet.com/

【記事協賛】
株式会社インターベット http://www.msd-animal-health.jp/

【犬の甲状腺機能低下症ってどんな病気?】
甲状腺の細胞が破壊される、遺伝性の自己免疫疾患

甲状腺はのど元の気管の左右に張り付くように存在する豆粒ほどの小さな臓器(内分泌腺)で、体のさまざまな代謝を活発にさせるための触媒のような働きがある「甲状腺ホルモン」を分泌しています。「甲状腺機能低下症」とは文字通り、甲状腺の機能が低下する病気です。甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンが十分に分泌されなくなくなると、代謝が悪くなって低下するために、全身にさまざまな影響を及ぼします。
甲状腺機能低下症は多くの場合自己免疫疾患で、本来は外部からの有害な物質に対して体を守る免疫システムに不具合が生じ、甲状腺を有害なものとみなして攻撃する自己抗体がつくられることで起こります。甲状腺からはいくつかのホルモンが分泌されますが、その一つ、チロキシン(サイロキシン)の基になるサイログロブリンという糖タンパクが甲状腺の中でつくられ、蓄積されています。甲状腺機能低下症にかかる多くの犬は、サイログロブリンを有害な抗原とみなしてしまう抗サイログロブリン抗体という抗体を生まれつきもっていて、この抗体が甲状腺を攻撃し細胞を破壊されていきます。そのため、チロキシンをはじめとする甲状腺ホルモンの分泌が妨げられて、慢性的に低下した状態になってしまいます。遺伝も関係すると言われています。

【どんな犬がかかりやすいの?】
ラブやゴールデンなどに多く、3~6歳頃から徐々に進行

どんな犬種にも起こる病気ですが、特にゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキー、アイリッシュ・セッター、ポインターなどの大型犬や、シェットランド・シープドッグ、ビーグル、柴犬などの中型犬に多いことが報告され、ミニチュア・ダックスフントやポメラニアンなどにも比較的多く見られます。年齢としては、3~6歳の成犬期から徐々に進行していきます。性別で比較すると、自己免疫疾患は全般的にメスのほうがかかりやすい傾向にあると言われています。

【どんな症状が出るの?】
不活発、肥満、脱毛などで、急激に老け込んだ雰囲気に

甲状腺ホルモンはさまざまな代謝機能に作用しているため、このホルモンが不足すると体のいろいろな部分に症状が現れます。典型的な症状は、なんとなく元気がなくなり、運動をしたがらなくなったり、疲れやすくなったりします。全体的に覇気がなく、いつもだるそうで、反応が鈍く、目に輝きがなくなってやる気のなさそうな顔つきになります。基礎代謝が落ちるので、食欲は変わらないのにぶくぶくと太りやすくなります。細胞の代謝も不活発になるので、急に寒がりになったり、いつもふるえていたり、歩き方がぎこちなくなったりします。メスでは発情サイクルが不規則になったり、発情が来なくなったりすることもあります。 また、皮膚や被毛の状態に変化が起こり、毛づや毛並みが悪い、毛がごわごわする、毛がよく抜ける、左右対称に脱毛する、脱毛した部分に色素沈着が起こる(黒ずみ)などが現れるため、皮膚病だと思って来院して発見されることもあります。外耳炎や皮膚病などが治りにくく、慢性化しやすくなることも。さらに糖尿病、アジソン病(副腎皮質機能低下症)など、内分泌系の病気を併発しやすくなったり、不整脈や徐脈などの循環器系の症状が現れたりすることもあります。
このように症状は実にさまざまで個体差もあり、現れ方もあいまいです。急に老け込んだ雰囲気になるので老化現象と間違われやすく、高齢期にさしかかった犬では「年のせいだからしかたがない」という思い込みから、病気の発見が遅れることもよくあります。気になる症状があったら、自己判断せずに動物病院で診察を受けましょう。

【どうすればわかるの?】
症状だけでは曖昧なので、ホルモン検査が不可欠!

甲状腺の細胞がゆっくりと壊されていくうえ、甲状腺ホルモン量が限界まで低下しないと具体的な症状が現れないため、気づいたときにはかなり進行していることもあります。また、症状もさまざまなので他の病気との判別も難しく、かつては皮膚病の一種と考えられていたこともありました。けれども、近年では検査の方法が確立されたため、確定診断ができるようになり、発見率もぐっと高くなりました。甲状腺機能低下症の診断のためには、甲状腺ホルモン検査が不可欠です。血液検査によって、総血清サイロキシン(T4)や遊離サイロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(cTSH)の血液中のホルモン濃度を測定します。甲状腺機能低下症にかかっているとコレステロール値の上昇や軽い貧血などが見られることもあります。他の病気によって甲状腺ホルモンが低下することもあるので、症状と他の血液検査の結果も合わせて総合的に判断します。

【どんな治療をするの?】
完治はしないが、薬で管理すれば元気に長生きできる

一度壊れてしまった甲状腺の機能を元に戻すことはできないので、甲状腺機能低下症は完治しない病気です。けれども、合成甲状腺ホルモン(ホルモン製剤)を投与して低下した甲状腺ホルモンを補えば、見違えるほど症状が改善され、犬の気力や体力もまた戻って元気になります。合成甲状腺ホルモンは自宅で与えられる内服薬で、薬を一生続けていく必要はありますが、ホルモン量を適切にコントロールしていけば、症状が安定して健康な犬と同じくらい長生きすることは十分に可能です。最近では、1日1回フードに混ぜて与えられる液状の製剤も登場し、投与の負担も軽減されました。
逆に治療せずに放っておけば、犬もずっと体がだるいまま過ごさなければなりませんし、徐々に症状が悪化して体のあちこちに負担がかかり、確実に寿命が縮まります。

【予防はできる?】
定期的なホルモン検査で早期発見・治療!

自己免疫疾患のこの病気の効果的な予防法は、残念ながらありません。ですから、病気を早期に発見して、甲状腺ホルモン量をコントロールする治療を早めに開始することが重要になります。なんとなく元気がない、毛づやが悪いなど目に見える症状が現れる頃には、ホルモン量はかなり低下していますが、若い頃から定期的にホルモン検査を行うことによって、症状が出る以前の数値的な減少の段階で発見することができます。一般的な定期健診とともに、10歳までは年に1回、老化によってさまざまな病気にかかりやすくなる10歳以上は年2回のホルモン検査を行い、甲状腺ホルモンの状態を確認しましょう。
また、甲状腺機能低下症は遺伝する病気だと考えられています。病気の原因となる抗サイログロブリン抗体を生まれつきもっているかどうかということもホルモン検査によって調べることができます。病気を蔓延させないためにも、この抗体をもっている犬の繁殖は避けましょう

【Doctors Message】
自覚症状を伝えられない愛犬のために定期健診は重要です!

「犬の甲状腺機能低下症は昔からある病気ですが、以前は動物用の検査方法が確立されていなかったので、正確な診断が難しい病気でした。けれども、今では動物用の検査方法も普及したことで早期のうちに発見できるようになり、完治はしなくても適切な治療を行えば天寿を全うすることもできます。この病気は症状もあいまいで少しずつ進行するので、注意して観察していても、毎日見慣れている飼い主さんでは変化に気づきにくいものです。その間、犬はだるくてつらい思いをずっとしています。犬は自覚症状を言葉で伝えることができないので、ホルモン検査を含めた定期健診をしっかり行い、トラブルを早期に発見して改善してあげることが何よりも大切。定期健診はぜひ健康なう異常の早期発見につながるからです。動物病院は“病気の治療とワクチン接種とフィラリアの薬をもらいにいくところ”と思っている方が多いかもしれませんが、“病気にさせないため”にもどんどん活用してください」

神奈川県 たけうち動物病院 竹内 和義 先生

 愛犬の様子が気になる方はチェック!

甲状腺機能低下症が少しでも気になる飼い主さんは、下のチェックリストで愛犬に当てはまる症状がいくつあるか確認してみてください。2つ以上症状が当てはまったら、動物病院で相談してみましょう。

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