犬のがん(癌、ガン)とは?乳腺や皮膚の腫瘍に要注意

獣医療が進歩して飼育環境が良くなった結果、犬は昔とくらべてずいぶん長生きするようになりました。しかし、その一方で高齢犬(老犬)に特有な病気、がん(癌)が増えているのも事実です。ここでは犬のがん(癌)について、その種類や症状をご紹介します。

2008年6月9日RSSRSS

高齢犬に発生しやすい犬の腫瘍。悪性腫瘍=がん(癌)に要注意

犬はもともと腫瘍ができやすい動物です。腫瘍とは、細胞が本来の規則に従わず増殖し、異常な組織を形成したものをいいます。腫瘍には良性と悪性のものがあり、腫瘍が転移せず、命に関わるおそれの少ないものを良性腫瘍、腫瘍が全身に転移して、命に関わるおそれのあるものを悪性腫瘍といいます。さらに悪性腫瘍のうち、上皮組織(皮膚、消化管、呼吸器道)から発生したものを「がん(癌)」、非上皮組織(血管、リンパ管、神経組織など)から発生したものを「肉腫」といいます。したがって、一般に良性腫瘍を「がん(癌)」と呼ぶことはありません。

腫瘍は、犬が7歳を超えると発生率が高くなり、年齢を重ねるほど発生しやすくなります。これは、高齢になれば気力・体力とともに抵抗力も衰え、また細胞も傷みやすくなるのが理由です。腫瘍ができる原因は、老化のほかに、発がん性の化学物質、紫外線、ウイルス、ホルモン、遺伝などが複雑に関係していると考えられます。

体表にできるものが多い、犬のがん(癌)。しこりや潰瘍などが現れます。

犬の腫瘍のなかでもっとも多くみられるのは、乳腺腫瘍と皮膚腫瘍です。乳腺腫瘍はメスの犬にもっとも多くみられる腫瘍で、人間と同じように乳房にしこりができます。皮膚腫瘍には、腺腫、脂肪腫、上皮腫(以上、良性腫瘍)や、肥満細胞腫扁平上皮がん、腺がん、肛門周囲腺腫(以上、悪性腫瘍)などがあります。犬に発生するがん(悪性腫瘍)は、おもに次のものがあります。

犬に発生するおもながん(悪性腫瘍)の種類
体表(皮膚)にできるがん 肥満細胞腫扁平上皮がん、腺がん、肛門周囲腺腫 など
体内(臓器や口の中)にできるがん 乳がん悪性黒色腫(メラノーマ)扁平上皮がん、線維肉腫、前立腺がん など
骨にできるがん 骨肉腫
その他のがん 悪性リンパ腫(リンパ肉腫)

乳腺腫瘍はメスの犬にもっとも多くみられる腫瘍で、避妊手術をしていない8歳~10歳前後の犬に発生します。乳腺腫瘍の約50%が悪性の乳がんで、残りは良性です。乳がんの場合は、肺や肝臓、リンパ節などに転移する可能性があります。

悪性の皮膚腫瘍のなかで、もっとも多くみられるのが肥満細胞腫です。このがん(癌)は転移しやすく、体表のどこにでも発生します。その症状はさまざまで、皮膚にコブ状の固いしこりや潰瘍が発生するほか、腫瘍のまわりに炎症や脱毛が起こるため、皮膚病にみえることがあります。転移すれば命に関わります。

乳腺腫瘍や皮膚腫瘍の次によくみられる腫瘍が、口腔腫瘍(口のなかにできる腫瘍)です。悪性のものでは悪性黒色腫(メラノーマ)扁平上皮がんなどがあります。なかでも悪性黒色腫(メラノーマ)は悪性度が高く、口腔内の粘膜や舌に黒い腫瘍ができ、急激にがん(癌)が進行します。扁平上皮がんも、危険な口腔腫瘍です。発生すれば、口のなかの粘膜にただれや潰瘍、出血がみられ、リンパ節や肺に転移することがあります。

その他に危険ながん(癌)として、悪性リンパ腫(リンパ肉腫)があります。血液のがん(癌、ガン)の一種で、発生するとおもにあごやわきの下、足のつけ根などのリンパ節にはれが現れます。また、オスの犬に発生する前立腺がんも、危険ながん(癌)です。このがん(癌)は、人間ほど発症頻度は高くありませんが、去勢手術をしていないオスの高齢犬にしばしば発生します。

がん(癌)は早期発見・早期治療が重要。日頃から愛犬のボディチェックと健診を。

犬は自分で身体の不調や異変を訴えることができないため、犬の腫瘍はどうしても発見が遅れがちになります。良性であれば問題は少ないですが、悪性であればがん(癌)が増殖・転移して手遅れになります。したがって、いかに早い段階(まだ腫瘍が小さいとき)に、犬の腫瘍に気づいてあげられるかがポイントになります。

犬のがん(癌)は、乳がんや皮膚腫瘍、口腔腫瘍などの体表に出るものであれば、ボディチェックやグルーミングなどを通じて発見することができます。愛犬が6歳~7歳を過ぎれば、定期的に愛犬の身体をチェックして、お腹や足にしこりがないか、口のなかに潰瘍がないかなどをチェックするよう心がけましょう。一方で、お腹や骨、脳などの腫瘍は発見が難しいため、定期的に動物病院の診察を受け、腫瘍の有無を調べることが大切です。また、愛犬の行動や様子の異変に気づいてあげられるよう、日頃から愛犬を注意深く観察するようにしましょう。

お腹や骨、脳の腫瘍とその症状
お腹の腫瘍 胃がん、肝臓がん、腎臓がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮がん など 元気がなくなる、食欲低下、嘔吐、下痢、体重低下、血便・血尿が出る、便や尿が出にくい など
骨の腫瘍 骨肉腫 など 足を引きずる など
脳の腫瘍 脳腫瘍 歩き方がおかしい、ふらつく、旋回運動、痙攣(けいれん)、てんかん発作 など

いずれにしても、犬の腫瘍は早期発見・早期治療が何より大切です。しこりや潰瘍など疑われる症状が見つかれば、なるべく早めに動物病院で診察を受け、もしも悪性腫瘍=がん(癌)であることがわかれば、一刻も早く治療を開始するようにしましょう。

それぞれの犬のがん(癌、ガン)については、こちらで詳しくご紹介しています。

体表にできるがん

体内(臓器や口の中)にできるがん

その他のがん

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