猫の病気事典

猫のフィラリア症(犬糸状虫症)

フィラリア症(犬糸状虫症)は、犬糸状虫(フィラリア)と呼ばれる寄生虫が心臓(おもに肺動脈)に寄生して起こる病気です。名前からすると犬の病気というイメージがありますが、この寄生虫は猫にも寄生することがあります。猫がフィラリアに寄生されてもほとんど症状が見られないこともありますが、喘息のような咳や呼吸困難、嘔吐といった症状が見られたり、さらには突然死することもあります。猫では犬に比べてフィラリア症の診断が難しいため、何より予防が大切です。

更新日:2010年 04月 07日

主な症状 下痢をする 吐く(嘔吐) 息が荒い(呼吸が苦しそう) 寝ていることが多い 咳をする 食欲がない 体重が落ちる

猫のフィラリア症の【症状】はじめは呼吸器症状や嘔吐、下痢などが見られる

フィラリア症の症状は、フィラリアの肺動脈到達時期(体内に侵入したフィラリアが肺動脈に達する時期)と死滅時期(フィラリアの成虫が死滅する時期)とで異なります。
フィラリアの肺動脈到達時期(感染してから3〜4ヵ月後)のおもな症状としては、咳や呼吸困難など「HARD(Heartworm Associated Respiratory Disease=犬糸状虫随伴呼吸器疾患)」と呼ばれる慢性の呼吸器症状が現れるほか、吐いたり下痢したりすることもあります。慢性化してくると咳のほかに、食欲低下や嗜眠(眠っていることが多くなる)、体重の減少といった症状が現れる猫もいますが、目立った症状の見られない猫もいます。
一方で、フィラリアの死滅時期では、死滅したフィラリア虫体が肺動脈に詰まったり、虫体によってアナフィラキシーショックを起こしたりすることがあり、突然の呼吸困難や虚脱により死に至る場合があります。

猫のフィラリア症の【原因】フィラリアが蚊を媒介に猫に感染、おもに肺動脈に寄生する

フィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という内部寄生虫の感染が原因で発症します。フィラリアは蚊を媒介に宿主(おもに犬)の体内に侵入し、皮下組織などで発育。心臓や肺動脈に移行して成虫になります。フィラリアの成虫は、本来の寄生場所ではない中枢神経系などにも寄生し、神経症状を起こすこともあります。

フィラリアが猫に感染するまで
  1. (1)フィラリアに感染した犬の体内で、フィラリアの成虫が幼虫(ミクロフィラリア)を産み、幼虫(ミクロフィラリア)が犬の血管内を浮遊するようになる※
  2. (2)蚊がフィラリアに感染した犬を吸血すると、犬の血管内にいた幼虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に侵入する
  3. (3)幼虫(ミクロフィラリア)は蚊の体内で成長し、(温暖な季節であれば)10日〜2週間程度で感染能力を持った感染幼虫となる
  4. (4)フィラリアの感染幼虫を体内に持っている蚊が猫を吸血した際に、感染幼虫が猫の体内に入り、感染が成立する

※幼虫(ミクロフィラリア)は5段階の発育時期を経て成虫となります。成虫になるには、媒介者となる蚊の体内で脱皮・成長して、ミクロフィラリアから感染幼虫となる必要があります。

猫のフィラリア症の【メカニズム】フィラリアへの激しいアレルギー反応が突然死をまねく

フィラリアの肺動脈到達時期の症状は、肺動脈に寄生するフィラリア虫体やその分泌物によって血管や肺動脈に炎症が起こることで生じます。
一方、フィラリアの死滅時期における突然死などの重い症状は、肺動脈で死滅したフィラリアの虫体に対して、猫の体が急激なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)を示したり、死滅した虫体が肺動脈に詰まって急性の呼吸困難が引き起こされたりすることで発生します。アナフィラキシー反応の症状はたった1匹のフィラリアに対しても発生する可能性があります。

猫のフィラリア症の【治療】薬剤などでの成虫駆虫や、炎症や咳を抑える対症療法

フィラリアの治療には、症状に対する治療とフィラリア成虫を駆虫する治療があります。フィラリア自体を駆虫する方法としては、成虫駆虫薬の投与ないし外科的治療法があります。成虫駆虫薬の投与は、フィラリア寄生数や猫の状態によってはアナフィラキシーショックなどの合併症が出る可能性があり、猫ではあまり行われません。外科的治療法は大静脈症候群に陥った場合に適応されます。
このように、猫の場合ではフィラリア成虫を駆除することは難しいため、成虫駆除よりは、フィラリア寄生による炎症や咳を抑えるため、ステロイド剤や気管支拡張剤の投与といった対症療法が中心に行われます。症状が重いものでは入院治療が必要となります。

猫のフィラリア症の【予防】室外・室内飼いに関わらず、月に1回、予防薬を定期的に投与する

フィラリアを予防するには、幼虫に駆除効果のあるフィラリア予防薬を、毎月、定期的に投与します。フィラリア感染が見られる地域では、蚊の活動が始まる春〜初夏から、蚊が見られなくなる時期の1カ月後までフィラリア予防薬の投与を続けます。ただし、蚊の活動期間および投薬期間は地域によって異なります。かかりつけの動物病院の指示に従うようにしましょう。室内飼いの徹底も有効な予防法になりますが、蚊に刺される可能性がないとは言い切れません。室内飼いの場合でも予防薬を定期的に投与することが望ましいといえます。

「猫のフィラリア症(犬糸状虫症)」のポイント

猫の場合、寄生するフィラリアの数が非常に少ないため、検査では偽陰性(本当は陽性であるのに病気が発見されないこと)となるケースが多くあります。診断が難しく、予防が何より大切といえます。

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