Petwell 猫の病気事典
ねこのねっちゅうしょう(ねっしゃびょう、にっしゃびょう)

猫の熱中症(熱射病、日射病)

熱中症(熱射病、日射病)は、真夏の暑い日に閉め切った狭い場所に閉じこめられることなどが原因で発症します。急激な体温の上昇にともない、開口呼吸(口を開けて呼吸すること。パンディングともいう)や流涎(りゅうぜん:よだれを流すこと)といった症状が現れます。犬とくらべれば発症の機会はまれですが、ひどい場合は呼吸困難や痙攣(けいれん)を引き起こし、命に関わることもあるため、気をつけておきたい病気です。

主な症状 よだれが多い ショック状態を起こす 下痢をする 吐く(嘔吐) 息が荒い(呼吸が苦しそう) 熱がある 痙攣(けいれん)を起こす 皮膚や粘膜が青白い(チアノーゼ) 目が赤い 血便が出る 血尿が出る 
命の危険 【やや高い】 重症や急性症状の場合には、命に関わる恐れがあるかもしれません

【症状】口を開けてハァハァと呼吸したり、よだれを垂れ流す

熱中症の猫には、次のような症状が見られます。

  1. 熱中症の症状
    急激な体温の上昇(40℃以上)にともない、口を開けてハァハァとあえぐように呼吸をし、よだれが口から流れ出します。また、目や口腔粘膜が充血してきます。そして、悪心(おしん:吐き気)を示したり、嘔吐や下痢をしたり、一時的にふらついて倒れてしまうことがあります。
  2. 熱中症がさらに進行した場合
    虚脱や失神、筋肉のふるえが見られたり、意識が混濁し、呼びかけにあまり反応しなくなったりします。さらには、完全に意識がなくなったり、全身性の痙攣発作を起こしたりすることもあります。症状がかなり進行すると、吐血や下血(血便)、血尿といった出血症状や、酸素をうまく取り込めないためにチアノーゼが見られたり、最悪の場合はショック症状を起こし、命に関わることもあります。

【原因】事故で風通しの悪い場所に閉じこめられるなど

熱中症は、体温が急激に高くなり、正常な体温を保てなくなることで発症します。本来、猫は暖かいところを好む動物ですが、汗腺が人間にくらべると少なく、発汗によって体温を調節することができません。そのため体温が急激に上昇すると、それを下げることが難しくなります。次のようなケースが、熱中症を引き起こすおもな原因となります。

  • 事故で閉め切った暑い場所に閉じこめられる
    夏の蒸し暑い日に、風通しが悪く、エアコンの効いていない部屋やケージの中などに閉じ込められた際に、熱中症を発症することがあります。とくに長時間、涼しい場所に移動できず、水も飲めないような場合はさらに危険です。
  • 蒸し暑い日に車内で留守番させる
    エアコンをつけていない車内での留守番も、熱中症の原因となります。日差しの強い駐車場で、エアコンをつけずに停車する車内は、熱がこもり温度が急上昇します。そのような車内では、短時間でも熱中症になってしまうことがあります。また、エアコンの代わりに窓を少し開けたからといっても、油断はできません。換気が十分ではないうえ、不慣れな車内での留守番に猫が緊張すれば、体温が急上昇することがあります。
  • 狭いキャリーケースでの移動時
    夏の蒸し暑い日に、狭いキャリーケースに入れたまま移動する場合も、しばしば熱中症の原因となります。狭く蒸し暑いキャリーケースのなかでストレスを感じたり、不慣れな場所への移動に猫が緊張すれば、体温が急上昇することがあります。

【傾向】短頭種猫や太り気味の猫、子猫や老猫が発症しやすい

次のような猫が、とくに熱中症になりやすい傾向があります。

  • 短頭種の猫
    ペルシャなどの鼻のつまった短頭種の猫は、体の構造上、スムーズな呼吸がしづらくなっています。これは暑熱環境下でさらに悪化するため、熱中症になりやすい傾向があります。
  • 太っている猫
    肥満気味の猫は、皮下脂肪が断熱材となって、体に熱がこもりやすく、かつ、心臓にも負担がかかり気味になっています。そのうえ、かなり肥満している猫では首まわりの脂肪によって気管が圧迫されたり、内臓脂肪で胸腔が狭くなっていたりと呼吸機能が低下しがちなので、呼吸による体温調節が難しく、熱中症になりやすい傾向があります。
  • 子猫や老猫
    子猫や老猫は体の生理機能が未発達であったり、逆に衰えていることが多かったりなどの理由から体温調節が上手くできないため、暑さに弱く、熱中症になりやすい傾向があります。

【応急処置】体を冷やしながら動物病院と連携し、一刻も早く治療を受ける

猫に熱中症の症状が見られる場合は、とにかく体を冷やすことが肝心です。風通しのよい涼しい場所に猫を移動させ、冷たい水で濡らしたタオルで全身を包む、霧吹きで水を噴きかける、氷枕を動脈の走る首のまわりやわきの下にあてがうなどして、急いで体温を下げます。このときの注意点として、体温を下げすぎないように、こまめに体温をはかり、39℃まで下がったら冷やすのをやめましょう。また呼吸を楽にするために、首を自然な形に伸ばした状態にしておくと良いでしょう。そして、猫の体を冷やしながら動物病院に連絡を取り、一刻も早く病院で獣医師の診断と治療を受けるようにします。

【予防】室内の風通しや室温に気をつけ、ドアを閉め切らないようにする

熱中症を予防するためには、次のようなことに注意しましょう。

  • 家の中で留守番させる場合
    室内の風通しに気をつけること。防犯上の問題がなければ、高窓を開けておいたり、換気扇や扇風機をつけて風の流れをつくるのも効果的です。できれば、部屋のドアを閉めきらずに開けておくこと。健康な猫であれば、自由に移動して自分で涼しい場所を見つけることができるものです。また、カーテンを閉めて、直射日光を避けることも大切です。猫が嫌がらなければ、あまりに暑い日はエアコンの除湿機能を利用するのも良いでしょう。さらに、クールマットなどを部屋に置いておくのも1つの方法です。そして、排尿することで体温を下げられるので、水をたっぷり用意して、トイレも清潔な状態にしておきましょう。
  • 猫と一緒に出かける場合
    夏の暑い時期に猫と車で出かける場合は、直射日光にあてないよう注意し、車内の換気を十分にして、温度が上昇しないように心がけましょう。ほかにも、濡れたタオルを用意し、体を時々拭いてあげるという方法もあります。グルーミング代わりに行うことで猫に安心感を与えるとともに、少しですが気化熱による冷却効果も期待できます。また、なるべく車内にひとりで留守番させないようにしてあげてください。キャリーケースに入れて移動する場合は、ケースの置き場所にも気を配り、直射日光などを避けるようにしてください。

「猫の熱中症(熱射病、日射病)」のポイント

猫の場合は、犬のように飼い主と外出することが少ないため、熱中症になるケースはまれです。しかし、長時間の移動など慣れない環境に置かれた場合に、ストレスや緊張などが原因で発症することがあります。猫と一緒に外出する場合は、猫の健康や換気に気を配るようにしましょう。

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