犬や猫の夜間展示を規制など、2012年「動物愛護管理法」の主な改正点

2012年7月20日RSSRSS

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昨年からパブリックコメント等に関する話題をPetwellニュースでお知らせし、また各メディアでも大きく取り上げられたのでご存じの方も多いかと思いますが、2012年、「動物愛護管理法」が改正となり、その一部が先月6月より施行となりました。制度の見直しが議論されたテーマは多岐にわたるものでしたが、今回改正されたのは、夜8時以降の展示・販売を規制することと、オークション業者、老犬・老猫ホームの登録を義務化したこと。今回の改正の経緯とポイントについて整理しました。

2012年は動物愛護管理法の改正年

動物愛護管理法は、正式には「動物の愛護及び管理に関する法律」といい、動物の虐待等の防止について定めた法律です。1999年12月に26年ぶりに改正され、2005年6月の改正時には、以後5年を目安に検討していくことが定められました。 2006年6月の施行時から5年を経て検討の時期を迎え、制度の見直しに関してさまざまな愛護団体から寄せられた要望が多岐にわたっていたことから、有識者で組織された「動物愛護管理のあり方検討小委員会(以下、委員会)」が設置され、2012年の改正年に向けて議論がなされてきました。

制度見直しが議論された主な内容

1.「動物取扱業の適正化」
  • 深夜販売(深夜販売禁止等の具体的数値規制の検討)
  • 販売時間(1日の展示時間や休息時間等の具体的数値規制の検討)
  • 犬猫幼齢動物の販売日齢(販売日齢制限の具体的数値規制の検討)
  • 業種追加の検討(動物の死体火葬・埋葬業者、両生類・魚類販売業者、実験動物生産業者、老犬ホーム、動物愛護団体等の追加検討) など
2.「虐待の防止」
  • 虐待の定義(法 44 条への具体的例(外傷が生じる暴行等)追記の必要性の検討)
  • 闘犬等(闘犬、闘鶏、闘牛等、動物同士を闘わせることの禁止規制の検討) など
3.「多頭飼育の適正化」
  • 届出制等の検討(犬 10 頭以上は届出等の制度の検討、化製場法との整理)
  • 適正飼養(適正飼養していない場合の立入調査、勧告・命令規定等の検討)
4.「自治体等の収容施設」
  • 収容施設等の基準(自治体の収容施設、飼養方法、公開基準等の基準化の検討)
  • 犬猫の殺処分方法の検討(苦痛のない安楽殺処分等の基準化の検討)
  • 犬猫の引取りルール(同じ飼養者・事業者等からの引取の規制の検討)
5.「特定動物」
  • 危険犬種の検討(ピットブル等の犬種の特定動物指定の検討)
  • 交雑種の検討(特定動物同士等の交雑種の特定動物指定の検討)
  • 特定動物移動時の手続き(簡素化の検討) など
6.「実験動物の福祉」
  • 届出制等の検討(届出制又は登録制等の規制導入の検討)
  • 3Rの推進(代替法、使用数の削減、苦痛の軽減の実効性確保の検討)
7.「産業動物の福祉」
  • 5つの自由(法の基本原則への明記、産業動物飼養等基準の改正等の検討)
8.「罰則の引き上げ」
  • 現行規制の強化(個人懲役3年・罰金 300 万円、法人罰金1億円等の検討)
9.「その他」
  • 犬猫のマイクロチップの義務化
  • 犬猫の不妊去勢の義務化
  • 飼い主のいない猫の繁殖制限 など

一部は早期に改正・施行が決まる。注目は夜間展示・販売の規制

委員会で取り上げられたさまざまな内容のうち、行政として迅速に対応でき、合意が得られるものについては、なるべく早く施行できるようにという主旨から、下記3点についての改正が2012年1月20日に公布され、2012年6月1日より施行されることとなりました。

  1. 犬および猫の夜間販売の規制
  2. 競りあっせん業(オークション市場業者など)の、動物取扱業としての登録
  3. 有償で動物を譲り受け飼養を行う譲受飼養業(いわゆる老犬・老猫ホームと呼ばれるもの)の、動物取扱業としての登録

これらの改正のなかで特筆すべきは、犬・猫の夜間展示の規制です。「動物が受けるストレス等に関する科学的知見はまだ少ないが、必ずしも科学的に解明されないと規制できないものではない」(動物愛護管理のあり方検討報告書)との考えに基づき、犬や猫のストレスを軽減するために改正が決定しました。この改正により、ペットショップ等で夜8時以降の犬猫の展示が禁止されました。

猫カフェ等での展示は夜間展示規制の一部適用外に

猫が自由に移動できる状態で屋内展示を行う事業者(いわゆる「猫カフェ」)より、夜間展示規制の対象から除外するべきという陳述書(*)が提出されたことを受けて、2012年5月21日、環境省は「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令」を追加公布しました。これは、猫に関して一定の展示条件を守っている場合は「午前8時から午後8時までの夜間展示規制に関し、例外措置をとる」ということを明記した省令で、条件をクリアした猫カフェ等での展示の場合は、午後10時まで可能となりました。

※陳述書の内容は、主に下記のとおりです。

  1. 仕事帰りの利用客が多く、夜間の展示が禁止された場合、営業に著しい支障が生じる
  2. 午後8時以降「カフェ」として営業するため、猫をケージ等に入れた場合、猫が活発に活動する時間帯に狭い場所に閉じ込めることになり、逆に猫のストレスが増加する

今後は議員立法による制度改正へ

今回改正された内容のほかに、早期に親元を離れることによる社会化不足(それにともなう問題行動)が懸念される「犬猫幼齢動物の販売日齢見直し」や「実験動物の福祉」など、委員会で活発に議論がなされたものの意見が分かれ結論に至らなかった内容については、今後は議員立法による制度改正が検討されることとなります。

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