あなたのケアで愛犬は守れる?間違いだらけのデンタルケア

ペット用の歯磨き、歯磨き効果のあるおもちゃやおやつなど、様々なデンタル用品が登場し、愛犬のデンタルケアへの関心が高まっています。一方で、飼い主さんの誤解や思い込みから、間違ったケアが当たり前のように横行しているのも事実。そこで、歯科治療のスペシャリスト、とだ動物病院院長・戸田 功先生に、デンタルケアについての正しい知識と方法をお聞きしました。

2013年11月8日RSSRSS

【取材協力】
戸田 功 先生(とだ動物病院 院長 http://www.toda-ah.jp/

アメリカで獣医歯科医療を学び、ペットの歯科医療に力を注ぐ。院長を務める江東区・とだ動物病院では、一般診療とともにペットの歯科診療を専門的に行っている。歯科検診や歯みがき指導などの予防歯科のほか、歯科の専門的な設備を整え、二次診療としての高度な手術にも対応。

歯周病はなぜ恐い?

見えないところで起こる厄介な病気

犬には虫歯がほとんどなく、最も多い歯のトラブルは歯周病です。そのため、犬のデンタルケアは歯周病対策が中心となります。
歯周病は、歯の病気ではなく、歯と歯肉(歯茎)の隙間(歯周ポケット)で起こる病気です。見えている歯の部分はきれいでも、外から見えない歯肉の中で進行するので、飼い主さんが気づきにくく、獣医師でもレントゲンを撮らないときちんとした診断はできません。
最近、歯はツルツルできれいなのに、根っこは腐っているというケースが増えています。飼い主さんが歯の表面の汚れを気にして、歯を拭ったり歯石を取り除いたりしているからでしょうが、実は、歯の表面の汚れは歯周病とはあまり関係がないんです。デンタルケアをするなら、きちんと指導を受けて正しい方法で行わなければ効果はありません。

病害は口内に留まらないことも

多くの飼い主さんは愛犬のつめが取れたら慌てて病院に駆け込んできて、大変だと大騒ぎします。体の中に細菌が入ることにそれほど抵抗があるのに、歯周病でずっと顎が腐ったままでも放置しているんです。
歯周病を起こす細菌は歯肉だけに留まりません。炎症が頬に広がったり、顎の骨を溶かしてしまったり、血流に乗って全身の臓器に運ばれる可能性もあります。歯周病が心臓病や腎臓病などを起こす直接の原因にはならなくても、悪影響を及ぼすリスクは多分にあるでしょう。実際、アメリカの統計では、歯周病がひどい子は、心臓病になる確率が高いというデータが出ています。

飼い主さんによくある誤解、思い込みとは・・・

歯周病の原因は、歯石でなく歯垢

「スケーリング(歯石除去)をしているから大丈夫」と誤解している飼い主さんがよくいますが、歯の上の歯石を取っても歯周病は治りません。歯周病の原因は歯石ではなく、歯垢だからです。歯垢は食べかすなどではなく、固形分の60%は細菌です。それが歯周ポケットに入って増殖し、歯周病を引き起こすのです。
歯石は歯垢が石灰化したもので、細菌はすでに死滅しているので悪さはしません。歯石が付くと歯の表面に凹凸ができて、細菌が繁殖しやすい足場になるので取った方がいいですが、慌てて取る必要もないものです。

麻酔のリスクより、治療が遅れる方が危険

麻酔のリスクを必要以上に恐れて、根本的な歯周病治療をためらう飼い主さんがいます。しかし、高齢で心臓が悪い犬の手術での麻酔と、健康で歯の汚れを取る程度の麻酔では、危険度は全然違います。まして、麻酔をするときは事前に検査をして、健康状態を把握してから行いますし、歯の治療の場合は、麻酔のかけ始めに体調が悪そうなら中断もできます。麻酔を怖がって処置が遅れる方が、愛犬の体にはよほど危険でしょう。
麻酔への恐れから、無麻酔スケーリングを選ぶ方もいますが、前述した通り、犬を押さえつけて恐怖心を与え、歯石を取り除いても歯周病は治せません。治せないのに、飼い主さんが治ったと思い込むのが一番の問題かもしれませんね。

ひづめや骨を噛ませても、歯周病には効かない

これほど医療が高度になっているのに、犬の歯については未だに間違ったケアがはびこっています。ひづめや骨を与えると、歯石の付着を防ぎ歯周病対策になるという思い込みも、その一つ。こうした硬すぎる物を噛むと、犬の臼歯はしばしば縦割れを起こすので、与えてはいけません。
そもそもデンタルボーンなどの噛ませるグッズやガーゼによる歯磨きは、歯の表面に当たるものなので、歯周病とは無関係です。歯周病に有効なのは、歯ブラシなどの歯周ポケットに入り込むものだけです。

知っておきたい!デンタルケアの正しい方法

歯ブラシによるケアが基本

家庭で行うデンタルケアは、歯ブラシが基本。歯ブラシを選ぶ際には、刺激の少ないやわらかめのもので、愛犬の口のサイズに合ったヘッドの歯ブラシを選びましょう。
歯ブラシには次の3つの効果があります。

  1. 歯垢(悪玉菌)を取る:歯周ポケットにブラシを当て、悪玉菌をかき出してきれいにします。
  2. 空気を入れる:悪玉菌は嫌気性の細菌で、酸素があるところでは増殖しにくいため、ブラッシ ングで歯周ポケットに空気を送り込みます。
  3. ドラッグデリバリー:ジェルなどの薬をブラシにつけて、歯周ポケットへ運びます。

歯の表面だけでなく、歯と歯の間、歯と歯肉の間の歯周ポケット、歯の裏側など、磨きにくいところも、毎日、しっかりブラシを当ててください。

ご褒美と歯ブラシを交互に繰り返すのがコツ

もっとも、歯ブラシによるケアは犬が慣れないとさせてくれません。ご褒美を使って根気よくトレーニングしてください。最初は口に触るだけ、次は指に好物の味をつけて歯に触ってみる、その次は歯ブラシに歯磨きペーストをつけて歯に触ってみる・・・など少しずつステップアップを。嫌がったらすぐに止めて、前のステップに戻ること。無理強いすると、その後触らせてくれなくなります。
歯ブラシが使えるようになったら、ご褒美・歯ブラシ、ご褒美・歯ブラシと交互に行っていくのがコツ。好物をなめさせてはブラッシングという要領です。ある飼い主さんは、ドライフードを1粒あげたら、歯ブラシ1~2秒を交互に繰り返し、少しずつ場所を変えて磨いています。20粒食べる場合は、2秒×20回が歯磨きタイムというわけです。

噛むデンタルグッズで口内をキレイに

歯磨きと並行して、デンタルボーンやデンタルロープなどを楽しみながら利用するのもいいでしょう。直接、歯周病に効かなくても、噛むことで唾液がたくさん出て口内をキレイに保てます。ただし、人が噛んで噛みきれる程度の硬さの、安全なものを選んでください。また、歯ブラシを毎回洗わずに使う人がいないのと同様、犬のデンタルグッズもきれいに洗って使用しましょう。

年1回、動物病院でチェックを

家庭でのデンタルケア以外に、年1回は動物病院に行き、レントゲンで歯と歯肉のチェックを。歯科専門病院での治療が必要になるケースもあります。歯周病は、ひどい口臭や痛み、食欲不振などで犬を苦しめるだけでなく、全身の臓器にも影響を及ぼしかねない病気です。病院で適切な処置と正しいデンタルケアの指導を受けて、愛犬の健康を守ってあげてください。

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