働く大人気アニマルに会いに行く!

愛らしい仕事ぶりが話題を呼び、一躍人気者になったこの2匹をご存知ですか?わかやま電鉄・貴志駅で駅長を務める三毛猫の「たま」と、テレビ東京の人気番組「ペット大集合! ポチたま」でもおなじみの、球場で活躍するベースボールドッグ「エルフ」。彼らはどんな経緯で今の仕事と巡り合い、どんなふうに働いているのでしょうか。現地に出向いて密着取材しました。

2009年5月15日RSSRSS

【取材協力】

和歌山電鐵株式会社 http://www.wakayama-dentetsu.co.jp/

わかやま電鉄 貴志駅の駅長「たま」に密着!

おもちゃ電車に乗って、「駅たま」に会おう

真新しい「おもちゃ電車」に乗って、わかやま電鉄貴志川線和歌山駅(JR和歌山駅9番線ホーム)から東方に向かって約30分。田んぼやみかん畑、雑木林など緑豊かな丘陵が続くのどかな田園風景をコトコト揺られていくと、終点の「貴志駅」に着いた。

ホームに降りてのんびり出口に向かうと、改札口辺りに人だかりがする。前に立つ人の肩越しにのぞくと、改札台の上に立派な制帽をかぶった「駅たま」こと、駅長の三毛猫「たま」が座っていた。

駅構内の売店「小山商店」のアイドル「たま」が無人駅である貴志駅駅長に就任したのは2007年1月5日。以来、毎日、朝9時から夕方5時まで勤務して子どもたちから学生、サラリーマン、お年寄りまでいろんな乗降客を出迎え、見送っている(日曜日は休み)。以前は電車の発着が苦手だったが、最近は慣れ、売店を切り盛りする飼い主の小山さんと一緒にホームを巡回することもある。

そんな猫の駅長さんに会うため、地元和歌山を始め、大阪や奈良などの関西、さらには東京方面から夜行列車「銀河」や夜行バスに乗ってやって来るファンもいる。「昨日も雨の中、大阪のおばさんたちが来てくれて、ひとりの方はたまの仕事ぶりに涙ぐんでおられました」と小山さんは言う。とりわけ週末や連休、春休みや夏休みは、たまお目当ての家族連れも多く、普段は静かな終着駅が、終日にぎわいを見せている。

たま一族、存亡の危機

駅長たまは、数奇な運命を背負った猫である。話は1998年にさかのぼる。貴志駅のひとつ手前「甘露寺前駅」近くで、当時、南海電気鉄道貴志川線駅舎の清掃作業を行っていたおじさんが茶トラの子猫を拾い、貴志駅に連れて来て飼いだした。それがたまの母となる「ミーコ」で、やがて駅売店の小山さんが世話することになった。

子猫から若猫へ育ったミーコのおなかが膨らんできて、子猫が何匹か生まれた。その中の三毛の子猫がたまで、1匹だけ親元に残されることになった。小山さんによれば、父親は、かのアイドル猫「はっちゃん」そっくりの野良猫だったとか。「赤ちゃんの時から、たまは光っていました」と当時を懐かしむ。

たまは慈愛に富んだ猫で、翌年、小山さんが保護した瀕死の子猫「ちび」を温めて命を救い、神社に捨てられていた子犬を育てたこともある。「お母さんにしかられて泣いているお子さんをなめに行ったり、わたしが疲れていると、”お母さん、頑張れ”と慰めてくれたり」と小山さんは語る。そんなたまのこと、貴志駅で乗り降りする人々皆に愛され、地元で知らない人のいない”癒やし猫”となった。

ところが2004年、突然、たま一族の未来に暗雲が漂いだした。貴志川線を運営してきた南海電鉄が、赤字路線だった同線廃止の意向を発表したのである。

90年の歴史を持ち、和歌山市の玄関・JR和歌山駅に直結する貴志川線は、終点・貴志駅のある貴志川町(現、紀の川市)を始め、沿線の人々の重要な生活手段であり、心のよりどころとして親しまれてきた。すぐに地域の人々による貴志川線存続を訴える市民運動が始まり、多くの賛同者を得た。

そこで、和歌山市と貴志川町が和歌山県の支援を受けて、2005年2月、同線の事業引き継ぎ先を公募。同年4月、岡山市で路面電車を運営する岡山電気軌道が事業委託者に選ばれた。そして2か月後に貴志川線を運営する事業会社「和歌山電鐵(通称、わかやま電鉄)」を設立。運営体制を改革して、2006年4月、南海電鉄から事業を引き継いだ。

駅長たまと「もっと! ずっと! 貴志川線」

「わかやま電鉄貴志川線」では経営効率化、合理化と利便性の向上、集客力アップに取り組み、新企画を展開していった。そのひとつが、いちご狩りで知られる貴志駅周辺をアピールするために2006年8月に導入した「いちご電車」であった。

新車両が発着する貴志駅で、たま一族は新たな苦難に直面する。南海電鉄に代わって貴志駅周辺の土地を保有する貴志川町から、駅の売店脇に設置された猫小屋の撤去を求められたのである。

しばらくのち、岡山から現地視察に訪れた社長の小嶋光信さんに、小山さんは「うちの猫たちを助けてください」と涙ながらに訴えた。たまを気に入った小嶋さんは駅舎内に猫小屋をつくることに決め、「駅舎に住むからには、たまに駅長をやってもらいたい」と粋な条件を出した。そして2007年1月5日、小嶋さんは委嘱状を携えて貴志駅を訪問。たまは正式に貴志駅駅長となり、母猫のミーコと同居猫のちびが同駅助役となった。

広報部長の山木慶子さんによれば、貴志川線は事業初年度、地域の人々の支援やいちご電車導入などで利用客数が約10%増加。たまが駅長に就任した1月には7%も増え、5月の連休には前年比40%も増えたという。2007年夏には「おもちゃ電車」もデビュー。注目度も一層高まりつつある。

「貴志川線は、もっと利用を促進していかないと、将来的に存続が難しい。一生懸命情報を発信して、地元を始め各地の方々にわかやま電鉄や自然と歴史に恵まれた周辺地域をもっと知っていただきたい。その意味でも、たまに駅長をやってもらって本当に良かった」と言って、山木さんは、ボランティア団体「貴志川線の未来を”つくる”会」がホーム脇に掲げる「もっと! ずっと! 貴志川線」の標語を見つめた。

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