ペットドックに行こう!

人が”人間ドック”に行くように、ペットも定期的に”ペットドック”を受けたいところ。特に高齢ペットは見た目は元気そうでも、病気の早期発見、健康維持のために、ぜひ習慣にしたいものですね。ところで「ペットドックって一体どんなことをするの?」と、不安に思う飼い主さんもおられるかもしれません。そこで今回は、犬と猫の健康診断を体験してみましょう。

2009年4月10日RSSRSS

【取材協力】

東京動物医療センター 副院長 南 直秀先生
東京都杉並区松庵2-19-15
http://www.tamc.jp/

犬や猫の老化速度は、人間の約4~5倍。

小型犬や猫なら9歳前後、大型犬は5、6歳ごろから健康診断を

高齢期になると、犬や猫は、心臓や肝臓、腎臓を始め、いろんな臓器が弱ってきて、様々な病気にかかりやすくなります。例えばゴールデンなどの大型犬は腫瘍が、小型犬では心臓弁膜症が特に増えてきます。またダックス系統の胴長犬種は椎間板ヘルニアのような脊椎の病気が目立ってきます。猫は高齢期になると腎臓の病気が極めて多くなります。犬・猫ともにリウマチ性の関節炎にかかるケースもあります。

それらの病気を早めに発見し、治療するために、定期的な健康診断が望まれます。ただし、一般に「犬の1年は人間の4、5年」と言われるように、犬や猫の成長、老化の速度は人間よりずっと速いのです。また、悪性腫瘍(がん)などはわずか数か月で生死にかかわるほどに大きくなったり、あちこちに転移したりしやすいので、人間並みの年1回の健康診断では手遅れになることもあります。少なくとも1年に2、3回、それに老化が速い大型犬なら5、6歳ごろから、小型犬や猫なら9歳前後から健康診断を受けることをお勧めします。

【問診】普段の生活状況から、病気の可能性を推測

健康診断でとても大切なのは、問診です。最初に、普段の生活の中で変わったことがなかったかを詳しくお聞きします。例えば、きちんと食事をしているか。ウンチやオシッコの状態はどうか。排便、排尿の仕方で気になることはないか。不自然な歩き方をしていないか。段差の上り下りはスムーズか。夕方や夜の散歩の時、暗がりを怖がるようになっていないか、などです。そんなお話から、胃腸や腎臓、膀胱などの働き、脊椎や足腰の関節異常、白内障などの目の病気、あるいは、人間でいう認知症の可能性など、いろんなことが推測できるようになります。

【視診・触診・聴診】外から見て、触って調べ、異常がないか確認

問診が終わると、顔、頭から背中、胸、おなか、お尻、四肢、しっぽと体全体を順に目と手で調べていきます。

頭部では目や耳、鼻、そして口の中が要注意です。年を取ると、犬や猫のほとんどが歯周病などに悩まされやすくなります。放置していると、歯周病菌が血流に乗って体内のあちこちに運ばれ、心臓や腎臓、肝臓などが悪くなったりします。

体を触っていくと、体表部にしこりやデキモノができていないか、背骨や足腰の関節が変形していないか。関節の動きに問題はないか。どこか痛みを感じるところはないか。肝臓や腸、前立腺などが腫れていないか、なども確認できます。そして、聴診器で心臓の働きに問題がないか調べます。

【血液(CBC)検査】血球数で炎症、栄養不良、貧血などをチェック

血液中の赤血球や白血球の数を数える検査です。どこかに炎症があれば、白血球の値が上昇しますし、栄養不良や貧血などでは赤血球の値が減少します。例えば大型犬では年を取ると脾臓に大きな腫瘍ができることがあります。通常、腫瘍ができても目立った症状が出ないことが多く、気づきにくい病気なのですが、大きくなり過ぎて体内ではじけると出血します。そんな時、「愛犬が突然腰砕けになった」と言ってくる飼い主さんもいます。

血液検査や血清検査を定期的に行っていると、前回とデータを比べてどんな違いがあるのか、どこに問題があるか推測し、レントゲンやエコーなどの画像検査でより詳しく調べていくことができます。

【血清検査】生化学物質の値から分かる臓器の異常

血中の酵素など生化学物質の値を測定するのが血清検査です。例えば、GOT(AST)やGPT(ALT)など肝臓にかかわる酵素の値が高いと、肝臓に何らかの異常がある可能性が高くなります。また、胆嚢に問題が起こっても、ALTの値が上がります。あるいはクレアチニンや尿素窒素など老廃物の値が高ければ、腎機能の異常が疑われます。

その他、コレステロール値が上昇していれば、甲状腺機能低下症の可能性もあります。他の臨床症状も合わせて、疑わしい場合はホルモン検査を行います。これは甲状腺ホルモンの分泌が減少する病気で、ゴールデンなどの大型犬に多く、元気がなくなり、毛が薄くなったりします。5歳以上で発症しやすく、つい老化と見なしてそのまま放置されがちです。

【尿・便検査】泌尿器と消化管の異常を探る

尿検査も極めて重要です。高齢期になると腎機能が低下して、うまく老廃物を排せつできなくなります。そんな時、尿の比重が低くなります。また尿のpH検査で、アルカリに傾くと尿路感染症などが、反対に酸性尿ではアシドーシス、飢餓、発熱などが問題になります。そして尿検査でケトン体の出現や尿糖が検出されれば糖尿病が疑われます。

便検査では、寄生虫の有無や腸内細菌のバランスなどを調べます。また、赤血球があれば消化管のどこかに異常のある恐れがあります。場合によっては、大腸、直腸のがんやポリープの可能性も考えられるので、内視鏡などでさらに詳しく検査することもあります。

【画像検査 レントゲン検査】胸部から関節まで、体内の状態を調べる

レントゲン検査は、X線(放射線)を体の特定部位に照射し、その陰影をフィルムに焼きつけて体内の状態を調べるものです。X線は空気や筋肉などはよく透過するので、フィルム上には「黒く」写ります。反対に骨や液体、腫瘍などがあるとうまく透過できず、フィルム上に「白く」写ります。そのため、足腰の骨や関節が変形していれば、その変形の具合がはっきりと白く写ることになります。

また、胸部レントゲンでは、肺の状態が良ければ「影」がなく、肺炎など炎症を起こしていたり、腫瘍があれば、その部分が白く写ります。心臓の形が変形していたり、肥大しているかどうかも判断できます。その他、胸に水(胸水)がたまっていれば、その影が白く写ります。腹部の状態は、レントゲン検査よりエコー検査のほうが適していますが、腎臓や膀胱などの結石の有無や、避妊していないメス犬などで、子宮内の細菌感染がひどくなって膿がたまる「子宮蓄膿症」などを調べることができます。

【画像検査 エコー(超音波)検査】腹部の臓器の他、心臓の異常発見にも

超音波を体の特定部位に当てて、その形態ばかりでなく、動き、働きを、モニター画面上でそのまま調べることができるのがエコー検査です。ただし、骨や気体などは超音波を通せないので、肋骨に囲まれた肺を見ることは難しいです。

エコー検査は、特に肝臓や腎臓、腸管、脾臓、胆嚢、膀胱など腹部の臓器を診断するのに優れています。エコー検査をすると、そのような臓器が腫れていたり、腫瘍のようなデキモノがあったり、胆嚢や膀胱などに結石や泥状のものがたまっていたりすると、よく分かります。エコー検査をすると、水分が「黒く」写りますので、オシッコのたまった膀胱に「白い」影があると、結石や結晶成分があることもあります。またエコー検査では臓器の動き、血流の状態をとらえることができるため、心臓の収縮具合や弁の異常(弁膜症)なども判定できます。

(初出:「よみうりペット」2009年2月20日発行号)

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