ペットへの放射線の影響を考える

2011年8月12日RSSRSS

まず知っておきたい放射線とは何なのか?

すべての生物は原発事故以前からすでに被曝しています

地球には、その誕生時から、放射性物質がたくさん存在しています。今回の原発事故が起こる前から、地球上の生命体は皆、自然界から被曝しているのです。

そもそも人は、体内の放射性カリウム(半減期は12.8億年)によって、4000~6000ベクレルの被曝をしています。これは、毎秒4000~6000個の遺伝子が傷つけられているということです。また、たとえばカリウムを豊富に含むバナナには放射性カリウムが含まれており、1本約150gとして、バナナを1本食べるごとに0.1マイクロシーベルトの内部被曝をしていることになるのです。
もちろん、体内から排出されやすいカリウムと、現在問題になっているヨウ素やセシウムをまったく同じレベルで考えるべきではありませんが、放射線は今回の事故が起こる前から私たちの身近に存在していたという事実を知ることは、放射線の影響を考えるうえで大切な前提となります。

また、放射線の管理という面では、今回の「原発事故による被曝」、「医療被曝」、「自然界から受ける被曝」は、それぞれ区別して考える必要がありますが、生体に与える影響という面のみを考えると、自然放射線と人工放射線による差はないことも、放射線を理解する重要なポイントです。

生物の体は傷ついた遺伝子を修復する能力を持っています

こうした環境で進化してきた生物は、放射線やそれ以外の理由で発生するラジカルに傷つけられた遺伝子を修復する力を備えてきました。

そして、遺伝子の修復に失敗する確率が増え始めるのは、100ミリシーベルトを超える多量の放射線に被曝した場合であることが、過去のデータなどからわかっています。癌を発症するのもこれと同じしくみで、修復に失敗した細胞がどんどん増えていった結果が、いわゆる癌なのです。ここで大切なのは、100ミリシーベルトというしきい値が、1年間の積算ではなく、一度に100ミリシーベルトということです。
100ミリシーベルト未満では、長期被曝でも短期被曝でも、大きな影響は確認されていません。また、一度に100ミリシーベルトを超えて被曝した場合も、必ず癌になるわけではなく、放射線が原因と考えられる癌が自然発症率をわずかに上回る数値として表れるものと考えてください。実際、宇宙飛行士は、宇宙空間では平均1日に1ミリシーベルト被爆することがわかっていますが、過去のデータを見ても、宇宙飛行士が特別に癌の発症率が高いなどということはありません。

また、子どもは細胞分裂が活発なことから、大人よりも放射線の影響が大きいため、できるだけ被曝リスクは避けるべきですが、過去のデータにおける100ミリシーベルト未満の被曝による影響は、大人の場合と同様に子どもの場合も確認されていないことも事実です。

優先すべきは、ペットのQOLです

では、ペットに対する影響はどうでしょうか?
遺伝子を傷つけるラジカルは、環境や体の状態によっても多く発生し、その原因として、大気汚染、紫外線、タバコや食品添加物などと並んで、ストレスが挙げられます。
ですから、高濃度の放射線が確認されていない地域では、放射線の影響を気にして外へは一歩も出さないなど、これまでと同じ日常生活を送れないストレスのほうが、ペットに大きな影響を与えている場合もあるのです。
ペットのことを想い、放射線の被曝リスクは限りなくゼロにしてあげたいと考える方も多いでしょうが、そのことが原因でQOL(生活の質)を下げてしまっては、本末転倒となってしまうのです。

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