飯田基晴さん(ドキュメンタリー映画作家)

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2002年に長編ドキュメンタリー映画「あしがらさん」を、2009年2月に犬猫を取り巻く現状を丹念に取材した「犬と猫と人間と」を完成させたドキュメンタリー映画作家、飯田基晴さんにインタビューしました。

“戦場のお医者さん”みたいな役割を、動物のボランティアさんたちが
担っている。それは、すごい衝撃でした。

僕は社会問題にそれほど関心があったわけでもないんです。でもドキュメンタリー映画が好きで、自分の知らない世界を知る中で社会にかかわることに興味を持ちました。その関心事のひとつにホームレスの人たちがいて、実際に、どんな人たちが、どんな思いで暮らしているのかを知りたくて新宿駅西口に通い、同じ人間なのに、なぜ、自分と路上に暮らす人たちがこれほど違うのか衝撃を受けたんです。そんな中で、ひとりのホームレスの方と知り合い、撮りだしたのが「あしがらさん」制作のきっかけでした。

2004年春に「あしがらさん」の劇場公開を始めた時、稲葉恵子さんという年配のご婦人が劇場に来られて、僕に「動物の映画を作ってほしい」と言われました。最初、半信半疑でしたが、その後、お会いすると、自分は捨て猫の世話をしてきたけれど、そういう猫たちが施設でいっぱい処分されている。そんな現状を変え、命の大切さを伝える映画を作ってほしい。多少の蓄えがあるので制作費にしてください。内容については一切、口を出しません、ということでした。

僕は、小学1年のころから実家で犬と暮らした経験がありましたが、犬や猫が処分される状況などについて、ほとんど知りませんでした。そこで書店に行って動物愛護に関する本を探した時に、今回の映画にも協力いただいた作家・渡辺眞子さんの著書に出会ったのです。それを読んだ時、これは動物たちの問題ではなく、人間の問題、今の日本の問題だというのを学びました。そこで、これからどんな映画を作るにしても、年間、何十万頭もの犬や猫が処分されている現実を自分の目で見なければと思い、まず、川崎市の施設で職員とボランティアの方が行っている飼い方教室を見学しました。

そのインストラクターの方が保護活動のボランティアをしていて、講義の後、収容犬舎へ犬を見に行くのに同行したんです。犬舎には犬が2頭。1頭は汚れきった老犬で、もう1頭は健康そうなビーグル犬でした。ボランティアの方は犬舎に入ると、ビーグル犬に近寄って健康状態を確認。自分たちがこの犬を預かるので処分を待ってほしいと、職員に頼んでいました。その間、老犬には見向きもしません。それは、老犬を保護しても新たな飼い主が見つからないため、若く元気な犬を優先せざるを得ない。何もできないことが申し訳なくて、老犬と目も合わせられないのです。

その様子を目の当たりにした時、これは”戦場のお医者さん”みたいだな、と思いました。野戦病院にケガ人が運ばれてきた時、誰を救うか。結局、その場で助けられそうな、治る見込みのある患者さんしか手当てできない。そんな役割を、日本の中で、ボランティアさんたちが”普通”に担っている。それは、すごい衝撃でした。

そんなふうに「犬と猫と人間と」の撮影は始まり、その後、4年近く、あちこちの施設やボランティア団体、さらにはイギリスまで出かけて取材を続け、2009年春、ようやく完成しました。

(初出:「よみうりペット」2009年3月20日発行号)

飯田基晴さん(ドキュメンタリー映画作家)

1973年、神奈川県生まれ。1996年より路上で暮らす人々とかかわり、1998年より映像で発表。2002年、長編ドキュメンタリー映画「あしがらさん」を完成させる。2006年、映像グループ ローポジション設立。「犬と猫と人間と」は2005年より撮影し、2009年2月に完成。同年10月に東京・ユーロスペースでの劇場公開が決定した。

映画情報はローポジションのホームページへ。
http://homepage2.nifty.com/lowposi/

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